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箱の話  1

心のありようで、ヒトは箱に入ってしまう。

今からお話しすることは、仕事とは何も関係ない、私のプライベートの話です。ありふれた場面であり、…あまり大声では言えない内容です。でも、この例について考えることは、人間関係を理解するのに、ひとつのヒントが生まれるキッカケになると思います。

ある日、私は電車に乗り込みました。クライアント先でひと仕事こなした後の帰りで、ずいぶん疲れていました。車内はありがたい事に座席が空いており、私は迷わず座りました。これで少しの間休める。そう安心していたと思います。
すると次の駅で、困ったことが起こりました。たくさんの乗客が乗り込んできたのです。それだけなら問題はありません。ただ、私の前に高齢の方が立ったのです。常識で考えれば、すぐに席を譲るべきでしょう。私も、最初はそうしようと考えました。でも、実際には譲らなかった。私は寝たふりをしたのです。薄目を空けながら、気づかないふりをしたのです。高齢の方は、私の前でずっと立っていました。

いかがでしょうか? ひどい男と思われた方もいるでしょう。同じ経験をして耳が痛い、という方もいらっしゃるかもしれません。ただ、ここで大切なことは、行為自体ではなく、その最中に私がどう感じていたか、です。

高齢の方を前に、寝たふりをしていた私はどう思っていたでしょうか?

つらいだろうな、座りたいだろうな、と目の前の方に同情したでしょうか?
それとも、勘弁してほしい。俺は疲れているんだ。忙しいんだ。少しくらい寝かせてくれよ。と思ったでしょうか?

…残念ながら、私は後者の考え方でした。

相手を、痛みも苦労もある【ひとりの人間】としてではなく、自分にとって【邪魔なモノ】として見ていたのです。だから、私は自分を正当化しようとしました。間違っているのは自分じゃない、と考えました。そうなると、悪いのは他人です。俺の前に立つから、狸寝入りをしなければいけない。他にも席はあるだろう。もっとよく見ろよ。…一旦こうなってしまうと、エスカレートするばかりですね。

自分を守り、他者を攻撃する。この状態を、アービンジャーは
【箱に入っている】と表現しました。この心のありようは、決して特別な状態ではありません。誰にでも起こりえるし、多くのひとが経験していることです。

「別に心の中でどう思おうといいじゃないか!口には出していなければ、誰かに迷惑をかけるわけではないだろう」

そう思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、実はこの
【箱に入っている】状況は、人間関係に大きな影響を与えているのです。次のページから、さらに詳しく話していきましょう。

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